11月11日。
僧帽弁閉鎖不全症の手術をする日が来ました。
11月1日に12才の誕生日を迎えたばかりのシーズー犬コロン。
心臓の大手術に挑みます。
今回は、僧帽弁閉鎖不全症の手術に臨んだ当日の体験記録です。
※傷口は写っていませんが、記事の途中で手術後の写真を掲載しています。

コロンです
コロンは前日から病院に預けて、手術前の検査や準備をしています。
▼ひとつ前のお話


犬僧帽弁閉鎖不全症手術体験記
【当日の流れ】
いよいよ、手術当日。
なんだか早く目が覚めて、朝からソワソワしました。
夜も何度も目が覚めて熟睡できなかったけれど、頭は冴えていました。
ついにこの日が来ました。



来てしまった…
8時に病院へ行くことになっていて、ホテルから病院までは車で20分ほどの距離でしたが、慣れない土地だし都会だし、道の混雑状況などが全然分からなかった為、早めに出発。
今日は雨が降っていて、昨日コロンと移動して来た時が晴れていて良かった…なんて考えながら移動しました。
緊張します…。
犬僧帽弁閉鎖不全症手術体験記
【術前の面会】
🕗8:00
病院に着くと、待合室ですぐコロンに会わせてもらえました。
昨日の打ち合わせ通り、左半身は毛が剃られてツルツルになっています。


前足と後ろ足、首も剃っています。


7月に初めて来院して、今回でまだ2回しか来ていない病院で一晩過ごしたコロン。
頑張ったね…。



まだまだ頑張ることになるんだけどね…
昨晩は、持参していたドッグフードを食べなかったそうで、念の為に一緒に持参していたリンゴを少し食べたようでした。
地元の病院に入院した時は3日間全く食べなかった経験があったので、リンゴだけでも食べてくれたと聞いて安心しました。
▼初めて入院した時のお話はこちら
一緒に手術をする予定の他の飼い主さん達は、まだ来られていない様子。
病院に来たらすぐに手術の説明などが始まるのかな…?
と思っていたけれど、けっこうゆっくりコロンと過ごす時間があって、写真を撮ったり動画を撮ったりする余裕がありました。
チラッと顔を見せてもらえるくらいかな…と思っていたので、



リードを持参すれば良かった…
と思いました。
そうこうしていると他の飼い主さん達が来院し始め、同じようにワンちゃんと面会していました。
今日は、予定通りコロンを合わせて3匹のワンちゃんの手術が行われます。
そのうち1匹のワンちゃんが、飼い主さんと再会して興奮したのか、咳込み始めました。
コロンよりも酷い、苦しそうな咳でした。
ここで私は、私達と同じように必死で闘病しながらこの日を迎えたワンちゃんと飼い主さん達に出会いました。
犬僧帽弁閉鎖不全症の手術体験記
【様々な症状】
慣れない病院でド緊張していると、他のワンちゃんの飼い主さんが声をかけてくださいました。
他の2組のワンちゃんと飼い主さん達は、病院の近くに住んでいる方々だったようで、私が住んでいる場所を伝えるととても驚かれました。
この日コロンと一緒に手術をしたワンちゃん達は、
「心臓の状態は重症で余命2ヶ月」と言われていたコロンが軽症に見えるほど、本当に重症なワンちゃん達でした。
手術までの間ギリギリの投薬量で過ごす
1匹目のワンちゃんはコロンと同じ12才で、待合室で時々ひどく咳込んでいました。
飲んでいる薬の量もコロンよりも多くて驚きました。
コロンは皮膚の薬も入れると6種類の薬を朝も晩も飲んでいて、十分多いと思っていたけれど、もっと飲んでいる子がいたなんて…。
利尿薬の量もコロンより多く、呼吸は苦しいけれど、腎臓の負担を考えるとこれ以上は利尿薬を増やすことができないギリギリの状態で、毎日酸素室で過ごしていたそうです。
7月に初めてこの病院を受診して、手術をすることを決意した時、執刀医さんに



今後コロンは、手術までの4ヶ月間にどれくらい悪化することが考えられますか?
と質問しました。
その時に、



コロンちゃんは、まだ薬の量を増やす余裕があるので、4ヶ月間病状を維持できると思われます。
と言われたことを思い出しました。
▼初めて循環器の専門病院を受診した日のお話はこちら
ギリギリの投薬量の場合、すぐに手術が必要な状態であることがわかります。
本来 今日は2匹の手術をする予定だったところ、いつ亡くなってもおかしくない状態まで悪化し、急遽手術をすることが決まった3匹目のワンちゃんでした。
心臓が破裂
2匹目のワンちゃんは、まだ9才。
待合室で「ワンワン!」と元気に吠えていました。
元気…に見えるけれど、この子も手術が必要な状態なんだな…
と思っていたら、飼い主さんから
「この子は今日までに心臓が2回も破裂したんです」と聞いて驚愕…!



心臓が破裂!?
異変を感じて、たまたま病院を受診した時に破裂した為、助かったのだそう…。
そしてその時に、その破裂が2回目であったことが分かったそうで、本当に危なかったのだとおっしゃっていました。



恐ろしすぎます…
このワンちゃんが、もしコロンのように病院が遠かったら…、異変を感じてもすぐに専門病院に行けない距離だったら…と思うと、病院が近くて本当に良かったと思いました。
9才の頃のコロンは、まだ全然症状が無く元気だったけれど、若くてもこんなに重症化してしまう子もいるのだな…と思いました。



8才で病気が発覚しました。
どのワンちゃんも、手術の日まで体がもつのだろうかと不安な中、やっとの思いで手術の日を迎えていました。
飼い主さん達が、どれだけの決意と努力でこの日を迎えたか、必死の看病の日々が言わなくても分かりました。
同じ想いの人達がいた…。
コロンの手術の成功を願ってここまで来たけれど、コロンと同じようにこの日を迎えたワンちゃんと飼い主さんに出会って、3匹とも絶対に成功してほしい…!と思いました。



ここで出会った飼い主さん達は、術後の面会中にも何度かお会いすることができて、回復状況などを共有できたので、同じ日に手術をするワンちゃんの飼い主さんと出会えて本当に良かったと思いました。
そしていよいよ、診察室に通されて、最終的な手術の説明が始まりました。
犬の僧帽弁閉鎖不全症手術体験記
【術前の説明】
🕣8:30
診察室へ呼ばれました。
待合室の飼い主さん達は、1人ずつ診察室で執刀医さんから説明を受けました。
執刀医さんは3匹連続で手術をする為、術後に説明ができないので、術後の話もこの時に聞きました。
その間コロンは看護師さんに連れられて、手術の準備をしていました。
犬の僧帽弁閉鎖不全症
【手術のタイミング】
最初に、昨日の術前検査の結果を教えてもらえました。
- 血液検査、腎数値ともに問題なし。
- 心臓の弁は広範囲に渡って壊れていて重症。
- このままでは【余命2ヶ月の状態】
と、結果は前回の検査結果と同じでしたが、咳などは出ておらず、
【現在は肺水腫を起こしていない】
【腎数値も正常値】であり、手術をするにはベストなタイミングだと言ってもらえました。



これ以上悪化させまいと、必死で看病した日々が報われた気がしました。



手術までに合計4回肺水腫を起こしました。
タイミングがベストだからといって、成功率が100%になるわけではなく、成功率は9割で変わりなしです。
心臓を止めて行う開心術は、命懸けのリスクがあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症手術体験記
【リスクと合併症】
開心術では命を脅かす様々な合併症が起こる場合があり、大きく分けて
- 術中
- 術後急性期(手術直後〜2日)
- 術後数日〜数ヶ月
の3つの段階で起こりうる可能性があります。
執刀医さんに、



この手術の【術後】には2つの峠があります。
と言われました。
- 1つ目の峠は、まず手術中と術後の今日・明日を乗り越えること。
- 2つ目の峠はその後、感染症・血栓・免疫系の異常を3ヶ月間起こさないこと。
と言われました。



3ヶ月…
①僧帽弁閉鎖不全症手術中のリスク
- 心臓を止めて僧帽弁を再建する手術で、人工心肺から離脱不能になり、心拍が戻らないことがある。
- 心臓・大血管に致命的な損傷が起こる。
- 人工心肺からの大量の空気誤送が起こる。
上記は手術中に起こり得るリスクで、昨日も説明を受けて一晩中恐怖におののいたリスクでしたが、今日は術後のリスクについても詳しく説明がありました。
②僧帽弁閉鎖不全症術後急性期に起こりうる合併症
- ワンちゃんの中には、時々術後に血が止まらない子がいる。
- 血栓ができて脳神経症状が出る。
- 不整脈や血管麻痺、過剰な炎症反応が起こる。
手術直後は、上記のような合併症が起こる可能性があり、手術が成功しても、術後2日間ほどは特に油断ができない状態が続きます。



聞くだけで恐ろしいです…
③僧帽弁閉鎖不全症手術の後数日~数ヶ月後に起こりうる合併症
- 心臓内に人工腱索を立てる為、人工物の設置などによって感染症が発生しやすい状況になり、【感染性心内膜炎】が起こる危険性がある。
- 術後早期から抗血栓治療を行うが、心臓内に設置した人工物に血栓が付着し増大し、術後に脳梗塞や【血栓塞栓】による膵炎などが起こることがある。
- 手術の刺激によって【免疫系の異常】が起こり、様々な合併症が起こることがある。
- 術後数日で調子が良好でも、急激に状態が悪化することがある。
「もう大丈夫だろう」と判断できるのは術後3ヶ月が目安だそうで、術後の経過を観察してこれらの症状が3ヶ月間起きなければ、やっと安心できる状態になるとのこと。
そして、これらのリスクが起こるのは【1割】だと説明を受けました。


なんだか、
まだまだ油断ができない日々が続くのだな…と気が遠くなりました。
この心臓の手術の日までに、何度も命の危機があり、今日までなんとか命を繋ごうと奮闘してきた闘病生活。
命懸けの手術なんて、できればしたくないと思っていたけれど、
余命宣告の通り、どんどん弱っていく姿を見て、心臓を治して早く元気にしてあげたい…と思うようになっていました。
▼手術前の様子はこちら
ついに手術の日を迎え、手術に成功することが最大の峠だと思っていた私は、その後にまだこんなにも油断できない【巨大な峠】があることを知って、改めてこの僧帽弁閉鎖不全症の手術が極めて難しい手術なのだということを痛感しました。
目前にあると思っていたゴールがまだまだ先にあることを思い知りました。



手術前に聞いた【9割成功】という数字は、成功する確率の方が高いように感じたけれど、【1割のリスク】の恐怖が常にありました。
この【1割の不安】は、手術を決意した日から術後3ヶ月検診で「もう大丈夫」と言ってもらえる日までずっと続きました。
僧帽弁閉鎖不全症手術【退院後の検診】
術前の説明の時に、2週間後に退院できた場合、その【1週間後】にまた検診を受けること。
その後は【術後1ヶ月検診】を受けることになると、退院後の検診の話も大まかに説明されました。
僧帽弁閉鎖不全症の術後は、定期的に慎重に経過を観察していきます。
それだけ術後に何が起こるかわからない手術であると言えます。



術後1週間・1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月・半年・1年・2年…と、定期的に経過を診ていきます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症手術体験記録
【手術へ】
※途中で手術直後の写真を掲載しています。
🕘8:50
執刀医さんの説明を聞いて、診察室から再度青ざめて出てくると、看護師さんが準備万端のコロンと会わせてくれました。


他の飼い主さんに絡んでいきたくて、不安というより不満なコロン。
点滴の準備をした状態だったので、動かないように抱っこしていました。
他の2組の飼い主さん達も、私の次に順番に診察室に呼ばれ、執刀医さんから同様に説明を受けていました。
3組の説明が全て終わってから手術開始となる為、また少しの間コロンと過ごさせてもらえました。


この状態で、9:40分頃まで過ごしました。
このように、
手術までの間、思っていたよりもゆっくり一緒に過ごす時間を作っていただけた印象でした。
🕙9:50
他の飼い主さんが説明を受けている間に、手術1番手のコロンは全身麻酔をする時間がきました。
いよいよです。
「15:00に術後のコロンと面会できる」と言われ、コロンを預けて宿泊先のホテルに戻りました。
ホテルでは、ここまでの流れを心配していた家族や応援してくれている友人達にLINEで報告。
もしかしたら病院から連絡が来るかもしれない…と、ハラハラドキドキしながら待ちました。
僧帽弁閉鎖不全症手術
【術後の様子】
🕒14:45
病院から何も連絡がなかったので、無事に手術は進んでいるのだろうか…と思いながら、少し早めに病院へ。
看護師さんに、
「ちょうど今手術が終わって、これからCTの撮影をして麻酔が覚めたら会えるので、1時間後くらいに面会できそうです。」
と言われました。
今 終わった…
無事だ…!
まだコロンには会えていないけれど、手術が無事に終わったようで、ホッとしました。
僧帽弁閉鎖不全症手術
【術後の面会】
🕓16:00
コロンが覚醒したそうで、面会ができました。


術後に舌が腫れたので、外に出しているそうで、見たことないくらい舌が出ていました。
舌が腫れるって…原理はよく分かりませんが、そこからも体に負担がかかる手術であることがわかります。



このまま一生 舌が出たままなのかな…?
でも生きていてくれたらそれでいい。
と思いました。
※翌日引っ込んでいました。
大手術を終えて、ICUの中で力なく横たわっている姿を見て、よく生きていてくれた…と思いました。



今はたくさん管に繋がれているので、動いてほしくないので眠ってもらっています。
と、看護師さんが言っているそばから、
「ん~…!?😪」
みたいな感じで、ムクッと首を上げたコロン。
舌を出したまま うつろな目で、キョロキョロとゆっくり首を左右に動かしました。



わっ…!!動いた!
だだだ、大丈夫!?



あんまり動くようなら、また眠ってもらいます。
と言われるコロン。
私を見つけて、無理に動こうとするのではないか…!と思い、咄嗟に物陰に隠れました。
実はこの日、かかりつけの病院の主治医さんと看護師さんが駆け付けてくださっていました。
かかりつけの病院では、同じ病気で【手術】を選択したワンちゃんがこれまでおらず、コロンが初めてであった為、どんな病院でどんな手術をするのか、【手術の見学】という名目でコロンの手術に立ち会ってくださっていました。



主治医さんが、手術可能な病院を探してくれたよ。



コロンちゃん、頑張っていましたよ!
と声をかけてくださって、
「一度心臓を止めて…、凄い手術でした…。」
と教えてくださいました。
不安でいっぱいでしたが、いつもお世話になっている主治医さんや看護師さんに会うことができてホッとしました。
この時 既に2匹目のワンちゃんの手術が始まっていました。
今朝出会った、2匹目のワンちゃんも、3匹目のわんちゃんも、絶対に手術が成功しますように…✨
コロンの様子が気になって、ICUの中で頑張っているコロンをこのまま何時間でも見ていられそうな気持ちだったけれど、まだ手術は続いているし病院にそんなに長居はできないので、名残惜しい気持ちで病院を出ました。
宿泊先のホテルへ。
今日の晩がまず山で、「何かあれば連絡する」と言われていたので、ハラハラしながら夜を過ごしました。
2匹目のワンちゃんや、3匹目のワンちゃんの手術が気になって、「そろそろ3匹目のワンちゃんの手術中かな…💭」と、なかなか眠れませんでした。
1番最初に手術をしたコロンに面会できたのが16時だったので、
2匹目や3匹目のワンちゃんと飼い主さんが面会できるのは何時になるんだろう…
と思いました。
※後で飼い主さんから聞いた話によると、3匹目のワンちゃんの手術が終わって飼い主さんが面会できたのは深夜3時頃だったそうです。



執刀医さん…凄すぎます…💦
本当に大変な手術です…!
【まとめ】
今回は、コロンが経験した僧帽弁閉鎖不全症手術の体験記録【手術当日の流れ】をまとめました。
手術当日の朝はコロンと会わせてもらえて、手術や術後についての説明を受けました。
手術自体は5時間くらいかかって、終了して1時間後に面会ができました。
手術の日とその後2日くらいが特に急変しやすく、その期間を乗り越えると次は術後3ヶ月の間は油断ができない日々が続く為、慎重に経過を診ていきます。
コロンは手術の日までは、術前検査の結果など順調で、手術を行うのもベストなタイミングだと言ってもらえましたが、術後はここから回復に時間がかかり、3ヶ月間油断できない日々が続くことになりました。
▼手術翌日の様子


▼病気の治療や薬についてまとめた記事はこちら

